ダイヤモンド産業の破壊的イノベーション「伝統と革新」の融合

ダイヤモンド産業の破壊的イノベーション「伝統と革新」の融合

本記事は、株式会社パーフェクト代表取締役の石田茂之氏と、株式会社ルシルケイ代表取締役の鈴木晃司氏が推進するダイヤモンド事業の全貌を、技術的、経済的、哲学的側面から包括的に分析することを目的とする。特に2026年の国際宝飾展で発表された革新的カットlucir cutと、サプライチェーンの透明性を担保するTraceable Diamond Clubの取り組みに焦点を当て、これらが今後の宝飾産業に与える示唆を明確にする。

この記事を書いたスタッフ

ITO MEGUMI
ITO MEGUMI

JEWELRY MAGAZINE所属。これまでの経験を活かし宝飾関連のリアルを発信していきます。みなさまのお役立ちになれるような情報を伝えていきます!

「ITO MEGUMI」はJEWELRY MAGAZINE本部のスタッフです。

目次

1. ダイヤモンド産業構造の変革

2020年代に入り、ラボグロウンダイヤモンド(Lab-Grown Diamond: LGD)の技術的成熟と市場浸透が進む中で、この産業構造に根本的な変革が訪れている。株式会社パーフェクト(Perfect Inc.)の代表取締役でありMr.ダイヤモンドの異名を持つ石田茂之氏と、株式会社ルシルケイ代表取締役の鈴木晃司氏による一連の取り組みは、この変革を日本市場において最も先鋭的に体現するものである。彼らの協業は、単なる新素材の導入に留まらず、ダイヤモンドの価値定義そのものを「重量(Asset Value)」から「審美的体験(Psychological Value)」へと移行させる哲学的挑戦である。

2. 新秩序:株式会社パーフェクト×株式会社ルシルケイが仕掛ける垂直統合モデル

ダイヤモンド産業における破壊的イノベーションは、伝統的な権威と革新的なビジョンの融合によってのみ達成される。石田茂之氏と鈴木晃司氏は、それぞれサプライチェーンの上流(調達・卸)と下流(小売・ブランディング)において、この融合を具現化している。


 石田茂之氏:伝統と革新の架け橋
株式会社パーフェクト

石田茂之氏は、日本のダイヤモンド業界において特異な地位を占める人物である。彼は、ミスターダイヤモンドと称され、株式会社パーフェクトのCEOとして、また一般社団法人日本グロウンダイヤモンド協会の代表理事として、市場の健全化と啓蒙を主導している。

ミスターダイヤモンドの実績と権威

石田氏のキャリアの基盤は、世界のダイヤモンド取引の中心地であるベルギーのアントワープにある。彼はアントワープのダイヤモンド取引所において最年少駐在員としてディーリング業務に従事し、約5年間にわたり世界の最前線で原石取引の実務を経験した。この経験は、彼にダイヤモンドの真贋、品質評価、そして国際的な人脈という、参入障壁の高い資産をもたらした。その実績は国際的にも高く評価されており、2016年にはベルギーのダイヤモンド業界を統括する公的機関である「アントワープ・ワールド・ダイヤモンド・センター(AWDC)」より、「Diamonds & Antwerp Ambassador」に任命された。これは、日本におけるベルギーダイヤモンドの大使としての役割を意味し、彼が扱うダイヤモンドが国際的な品質基準と倫理基準に準拠していることを公的に裏付けるものである。

株式会社パーフェクトの事業モデル
垂直統合「Perfect Rough」パーフェクトラフ

株式会社パーフェクトは、石田氏の知見を基盤に、ダイヤモンドの輸入・卸売を一貫して行う専門商社である。同社の事業には以下の特徴がある。   

  • 天然とラボグロウンのハイブリッド戦略: 社名にも冠された「Perfect Rough(パーフェクトラフ)」は、最高の天然ダイヤモンド原石を提案するブランドである一方、同社はラボグロウンダイヤモンドの研究・開発・販売も強力に推進している。これは、LGDを「天然の安価な代替品」としてではなく、「新しい価値基準を持つ独立したカテゴリー」として扱っていることを示唆している。   
  • 厳格な品質管理: ベルギーやインドの信頼できるパートナー企業と提携し、厳選されたルース(裸石)のみを直接輸入している。原石の選定からカット、研磨に至るまでを一貫して管理することで、市場に流通する一般的なダイヤモンドとは一線を画す品質を保証している。   
  • 教育とコンサルティング: 単なる販売に留まらず、ダイヤモンド教育・研修事業やコンサルティング、国内外の市場調査も手掛けており、業界全体のレベルアップに貢献している。

鈴木晃司氏:革命の哲学者
株式会社ルシルケイ

静岡県静岡市を拠点とする株式会社ルシルケイの代表取締役社長である鈴木晃司氏は、石田氏が調達した「完璧な素材」を、消費者の心を打つ「物語のある製品」へと昇華させる役割を担っている。

多角的な事業展開とITへの進出

ルシルケイは、総合宝飾店「LUCIR-K」をはじめ、ブライダルリング専門の「ETERNAL FRIST DIAMOND」「TIARA」など複数の店舗を展開する地域密着型の企業である。しかし、その活動は従来の小売業の枠を超えている。Web制作やアプリ開発、宝飾業界向けのコンサルティング業務などIT分野にも進出しており、SNSを活用した社員インフルエンサーのプロデュースやデジタル技術を活用して顧客体験の向上と新たな価値提供を模索している。

「革命と覚悟」の哲学

  鈴木氏の真骨頂は、その独自の商品開発哲学にある。彼は2026年のIJTにおいて発表した「ルシルカット」を通じて、ダイヤモンド業界の不文律であった「重量至上主義」に公然と反旗を翻した。彼の言葉を借りれば、これは「原石の鎖を断ち切る輝き」であり、「ダイヤモンドが初めて手にした真の自由」である。鈴木氏は、石田氏が提供するLGDという素材の可能性を極限まで引き出し、それを「革命」というナラティブ(物語)として市場に提示する優れたストーリーテラーでもある。   


3. 経済合理性に対する挑戦

株式会社ルシルケイ鈴木晃司氏が、2026年のIJTで最大の注目を集めたのが、新たなダイヤモンドカット「lucir cut(ルシルカット)」である。このカットは、単なる新しいデザインの提案ではなく、LGDという素材の特性を前提とした、経済合理性に対する挑戦である。

極限のプロポーション1:2

ルシルカットの最大の特徴は、その形状における「縦横比 1:2」という極端なプロポーションにある。一見すると、ルシルカットの外観は伝統的なペアシェイプ(洋ナシ型・涙型)に似ている。しかし、従来のペアシェイプは、原石の形状に合わせて丸みを帯びた「ふくよかな」シルエットになることが一般的であった。これは、原石の重量をできるだけ残す(歩留まりを良くする)ための妥協の産物でもあった。 対照的に、ルシルカットは「甘さを排除した鋭利な先端」と「高潔に伸びるシルエット」を持つ。1:2という比率は、ダイヤモンドを視覚的に長く、鋭く見せる効果があり、その姿は「闇を切り裂く光の刃」と形容される。

ラウンドブリリアントの光学的継承

ルシルカットの技術的な特異性は、その出発点がファンシーカット(変形カット)ではなく、ダイヤモンドの輝きの最高峰である「ラウンドブリリアントカット」にある点だ。   

  • 輝きのメカニズム: 通常、縦長のカット(マーキースやペアシェイプ)は、中央部に「ボウタイ(蝶ネクタイ)」と呼ばれる光の抜ける暗い影ができやすい。しかし、ルシルカットはラウンドブリリアントの「計算し尽くされた58面のカット構造」と「光の反射理論」をベースに設計されている。   
  • 緻密なファセット設計: 1:2という特殊な比率の中で、ラウンドブリリアントと同等の「全反射」と「強いブリリアンス(白色光の輝き)」を実現するために、極めて緻密なファセット(小面)の角度調整が行われている。これにより、鋭利なフォルムでありながら、内部から湧き上がるような圧倒的な輝きを維持することに成功している。

「禁断の選択」としての経済的意味

ルシルカットの真の革新性は、その製造プロセスにおける「経済的非合理性」にある。天然ダイヤモンドの加工において、原石からの重量維持率(歩留まり)は利益に直結する。1:2のプロポーションを実現するためには、原石の多くの部分を削り落とさなければならない。天然石でこれを行えば、原石コストに対する製品重量が著しく低下し、価格が跳ね上がるか、採算が取れなくなる。したがって、従来のカッターにとって、このようなカットは「タブー」であり「禁断の選択」であった。

ラボグロウンダイヤモンドによる実現

LGDは工業的に生産可能であるため、天然石に比べて原石コストの変動リスクが低く、供給も安定している。これにより、鈴木氏は「重さを捨てる。効率を度外視する」という決断を下すことができた。ルシルカットは、LGDという素材があって初めて成立する、「贅沢を極めたカット」なのである。


4. 素材の科学:本物のダイヤモンド

ダイヤモンドは、窒素不純物の含有量と存在形態によって分類される。

光学的・熱的特性

株式会社パーフェクトが扱う無色のLGDは、すべてこのType 2aとして成長させられる。窒素がないため、光の透過率が極めて高く、混じりけのない透明な輝きを放つ。また、熱伝導率もType 1aより優れており、物理的特性において「天然の最高級品」と同等、あるいはそれ以上の純度を誇る。

「Real Diamond」としての再定義

石田氏は、LGDを「偽物」や「模造品」ではなく、「自然に咲く花と、グリーンハウス(温室)で成長する花」の違いに例えている。   

  • 物質的同一性: 物質的特性(硬度、屈折率、比重、化学組成)は、地中から採掘された天然ダイヤモンドと完全に同一である。
  • 倫理的・環境的優位性(Eco Friendly): 大規模な露天掘りを必要としないため、地球環境への負荷が軽微である。また、紛争ダイヤモンドの資金源となるリスクも完全に排除されている。   

5. 市場へのインパクト
IJT 2026と今後の展望

天然ダイヤモンド vs ラボ育成ダイヤモンド「宝石の定義」と未来への激論

国際宝飾展のメインステージにて、宝飾業界の今後を占う重要テーマ「天然ダイヤモンドとラボダイヤ」に関するセミナーが開催されました。株式会社パーフェクト代表取締役のミスターダイヤモンドこと石田茂之氏をモデレーターに迎え、業界を代表するパネリストたちが登壇。伝統的な天然ダイヤモンド派と、新興のラボ推進派の間で、非常に熱い議論が交わされました。

「ラボダイヤは宝石か、工業製品か?」真っ向から対立する意見

否定派(天然重視)の主張

  「宝石の定義は『硬く、美しく、希少であること』。工場で作られるラボは希少ではないため、宝石ではなく工業製品である」 パネリストの深澤氏(ジャパンプレシャス編集長)や大畠氏(元デビアス)は、希少性の観点からラボダイヤを「宝石」と呼ぶことに慎重な姿勢を示しました。 

肯定派(ラボ推進)の主張

  「化学的な組成は天然と全く同じ。お客様にとっては、リフォームで持ち込まれるガラス玉であっても『宝石』であり、ラボダイヤも美しさを備えた宝石として位置づけるべき」 実際に店頭でラボダイヤを販売している鈴木氏(株式会社ルシルケイ)らは、顧客視点に立てばそれは十分に宝石であると反論。「天然の真鯛も養殖の真鯛も同じ真鯛であり魚である」「野生の蘭も栽培された蘭も同じ蘭であり花である」という例えを用い、どちらも魚であり花であるように、ラボもダイヤモンドであり宝石であると主張しました。

結論:変わらない価値と変わる未来

激論の末、進行統括の石田氏は以下の言葉でセミナーを締めくくりました。

「変わらないものにも価値があります。そして、変わるものにも未来があります」

天然ダイヤモンドが持つ不変の価値と、ラボダイヤが切り拓く新しい未来。どちらか一方を否定するのではなく、それぞれの特性を理解し、ビジネスにつなげていくことが2026年以降の宝飾業界に求められています。

共同出展によるシナジー

IJT 2026において、株式会社パーフェクトと株式会社ルシルケイは共同出展ブースを展開した。   

  • ブース構成: 「あなたの大切な瞬間を永遠の輝きで彩る」というミッションを掲げ、ラボグロウンダイヤモンド「My Precious Diamond」を展示した。
  • ターゲット層: ソーシャルバイヤー(ライブ販売などを行う個人や事業者)やインフルエンサーを明確なターゲットとして設定している。これは、従来の宝飾店ルートだけでなく、SNSを通じたD2C(Direct to Consumer)モデルを重視していることを示している。   
  • 製品ラインナップ: 5ctの大粒のダイヤモンドブランドや、天然では希少なカラーダイヤモンド、そして新作の「ルシルカット」を展示し、視覚的なインパクトと話題性を創出した。

補足資料:データとファクト

表1:天然ダイヤモンドと株式会社パーフェクトのLGDの比較

比較項目 天然ダイヤモンド パーフェクト社のLGD
起源 地球深部での地質活動 最先端技術による結晶成長 (ラボ)
化学組成 炭素 (不純物として窒素を含む場合が多い) 純粋な炭素 (窒素を含まない)
分類 主にType 1a (98%以上) Type 2a (希少・高純度)
環境負荷 大規模採掘による土壌・生態系への影響大 環境負荷が軽微 (エコフレンドリー)
価値基準 希少性・天然由来・資産価値 美しさ・輝き・倫理的価値・技術

表2:ルシルカット(Lucir Cut)の技術仕様

特徴 詳細   技術的・哲学的背景
プロポーション 縦横比 1 : 2 従来のペアシェイプよりも長く鋭い。原石の歩留まりを無視した「贅沢な」比率。
ベース構造 ラウンドブリリアントカット 輝きの最高峰である58面体構造の理論を応用し、全反射を実現。
視覚的印象 「光の刃」「鋭利」「高潔」 甘さを排除し、身につける人の強さと個性を際立たせるデザイン。
実現の要因 ラボグロウンダイヤモンド 安定供給可能な素材だからこそ、効率度外視の大胆なカットが可能になった。
開発者 鈴木 晃司 (株式会社ルシルケイ)   「ダイヤモンドが初めて手にした真の自由」という概念を提唱。

6. 透明性の構築
Traceable Diamond Club

技術と素材に加え、両氏の取り組みのもう一つの柱が「透明性(Transparency)」である。消費者が「何を買うか」だけでなく「誰から、どのような経緯で買うか」を重視する現代において、トレーサビリティ(追跡可能性)は必須の価値となる。

 設立目的とビジョン

石田茂之氏が発足させた「Traceable Diamond Club(トレサブルダイヤモンドクラブ)」は、その名の通り、原産地から消費者までの経路が完全に透明化されたダイヤモンド取引を目指す組織である。 既存のダイヤモンド流通は極めて複雑で、複数の仲買人を経由するため、最終的な販売店ですら石の正確な出所を知らないことが珍しくない。TDCは、このブラックボックス化した業界構造に光を当て、「透明な宝飾業界の未来」を描くことをミッションとしている。

ヴァージンダイヤモンドの証明

天然ダイヤモンドで問題視されているひとつにどの国から産出され、どのようにして私達の目の前にやってきたのか証明できるものはほとんどありません。約99%のダイヤモンドが証明されることは不可能であり、流通経路を証明する術もありません。そんな中で、どの国で産出されどのような経路で私達の目の前にやってきたのかAI管理されているダイヤモンドが存在します。それがパーフェクトラフです。

パーフェクトラフ

パーフェクトラフダイヤモンドは厳選されたダイヤモンド原石の中でも特に美しいソーヤブルからカットされたダイヤモンド。内側からあふれ出すような輝き、瑞々しい艶やかなテリと艶。4Cグレード関係なく思わせるようなダイヤモンド本来の輝きを楽しむことができます。

輝きの証明

ダイヤモンドは輝かなければ意味がありません。以前はダイヤモンドのカットやクラリティなどのグレードが関係していると思われていましたが、現在では輝きは計測できるようになりました。それがサリネライトレポートです。輝きの項目を4つに分類し最高値は「アルティメットスリースター」の称号を与えています。

トレーサビリティ(原産地証明)

天然ダイヤモンドの中ではわずか0.02%の確率で存在する原産地証明書付のダイヤモンド。天然ダイヤモンドで証明できるものはほとんどなく、ピュアなヴァージンダイヤモンドを証明するダイヤモンドはこの証明以外に無いのです。

ヴァージンダイヤモンドである証明

ヴァージンダイヤモンドを謳うお店はいくつもありますが、ヴァージンダイヤモンドである証明を出せるダイヤモンドはパーフェクトラフ以外にはこの世の中には、極限られた某有名ブランド以外に存在していません。このパーフェクトラフダイヤモンドはどのお店にもある訳ではなく、国内はトレサブルダイヤモンドクラブ加盟店しか取り扱っておりません。


7.結論:ダイヤモンド産業の未来図

石田茂之氏と鈴木晃司氏のパートナーシップは、日本の宝飾業界における一つの到達点を示している。それは、「世界最高水準の素材調達力(Perfect Inc.)」と「独創的な商品開発・ブランディング力(LUCIR-K)」、そして「倫理的なサプライチェーン、トレサブルダイヤモンドクラブ(TDC)」が三位一体となったビジネスモデルである。

彼らが提示するのは、天然ダイヤモンドの代替品としてのLGDではなく、天然では成し得なかったデザインと輝きを実現するための「進化した素材」としてのLGDである。ルシルカットに見られる「1:2」の極限プロポーションは、人間がダイヤモンドという素材を完全にコントロールし、美のために一切の妥協を排した証左である。

今後、彼らの取り組みが普及するにつれて、消費者のダイヤモンドに対する認識は大きく変化するだろう。重さといったスペック競争から解放され、純粋な「美」と「物語」、そして「透明性」が選ばれる時代へ。パーフェクトとルシルケイは、その最前線で、ダイヤモンドの新たな歴史を刻み続けている。


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